「去年は歩けたのに」50代・60代が今年トレッキングで膝を痛める本当の原因

「去年は歩けたのに」歩ける未来は毎日の足元から

子育ても、親の見送りも終え、これからは「自分の時間」を楽しみたい

「子育ても終わり、親の見送りも終わりました。

これからは、自分の時間を楽しみたいんです」

とてもご家族を大切に思っていらっしゃる、もうすぐ60歳を迎えるお客様が、そう話してくださいました。

ご主人と一緒に旅行に出かけたり、自然の中を歩いたり。まだ見ぬ景色を見に行きたい——そんな楽しみを、これから思う存分味わいたい年代。それが50代・60代ではないでしょうか。

けれどもこのお客様には、ひとつの不安がありました。

「去年は大丈夫だったトレッキングで、今年は膝が痛くなった」

同じように感じたことがある方、実は少なくないはずです。今日は、私自身の経験と、お客様とのやりとりから感じたことをお話しします。

※この記事は靴・歩き方に関する専門家としての視点をお伝えするものであり、医学的な診断や治療を行うものではありません。膝の痛みが続く場合や強い痛みがある場合は、必ず整形外科など医療機関を受診してください。


以前は毎日7,000歩。ケガをきっかけに生活が一変

このお客様は、以前わたしの継続コースを受けてくださっていた方です。

当時はオニツカタイガーの「セラーノ」を愛用し、靴ひもをしっかり締めて、毎日7,000歩ほど歩いていらっしゃいました。足の状態も安定し、その後はご自身の足に合ったパンプスも履きこなせるようになっていたのです。

ところが一昨年、膝を剥離骨折されました。

ケガの直後は膝を曲げて座ることすら難しく、靴ひもを結ぶのもひと苦労。自然と、簡単に脱ぎ履きできる靴を選ぶ生活になっていきました。

その後、医師の治療を経て日常生活に支障がない状態まで回復されたそうですが、セラーノを履く機会はほとんどなくなり、

  • 階段を使わなくなった
  • 洗濯物を外に干さなくなった
  • 仕事はZOOMなど自宅中心

という、「歩かない日常」が定着していたのです。週に1〜2回の外出時にはよく歩くものの、それ以外の日はほとんど自宅で過ごす生活でした。


なぜ「去年は平気」で「今年は痛い」のか?歩く量の変化と膝の関係

ケガから回復した翌年、軽いトレッキングに出かけたときは痛みが出ませんでした。ところが今年、同じようなコースを歩いたところ、膝に痛みが出てしまったそうです。

「去年は大丈夫だったのに、どうしてでしょう」

詳しく生活を伺う中で、わたしが靴・歩行の専門家として気になった点がありました。それは、日頃の「歩く時間」が、この一年でさらに減っていたということです。

日常の小さな動作が、脚の使い方に関わっている

  • 階段を上ること
  • 洗濯物を持って移動すること
  • 毎日、外へ出て歩くこと

ひとつひとつは小さな動きですが、こうした日常動作の積み重ねは、体を支える筋肉の使われ方と関係があると考えられています。

日常的に歩いていた方が、長期間あまり歩かない生活を送り、その状態で急にアップダウンのある山道を歩けば、足や膝への負担が普段より大きくなることは想像に難くありません。

今回のお客様のケースも、「歩く時間の減少」と「普段よりも負荷の高い道を歩いたこと」が重なったタイミングであったことは、ひとつの背景としてあったのではないかと、わたしは感じています。

膝の痛みの原因は人によってさまざまで、生活習慣・体の使い方・関節の状態など複数の要因が関わります。一つの要因だけで断定できるものではなく、あくまで靴と歩き方の専門家としての一つの視点としてお読みください。痛みが続く場合や強い痛みがある場合は、自己判断せず医療機関にご相談ください。


見落とされがちなポイント:「靴ひもを締めない」習慣

もうひとつ、わたしが気になったのが靴の履き方でした。

ケガをする前は、靴ひもをしっかり締めて歩いていたこのお客様。しかし現在は、ゆったりした靴を、ひもを締めずに履くことが多くなっていました。

靴ひもを締めずに歩くと、靴の中で足が動きやすくなります。足が靴の中で安定しなければ、一歩ごとに余分な力を使うことになり、その負担は足だけでなく、膝や体全体の使い方にも影響すると考えられています。

「ただ靴を履く」のではなく、「足が靴の中で安定するように履く」——このひと手間を大切にすることを、わたしはお客様にいつもお伝えしています。


靴ひもを結ぶことは、足への“スキンケア”のようなもの

毎回靴ひもを締めるのは、正直なところ少し面倒に感じる日もあると思います。忙しい朝や急いで出かけたいときは、つい簡単な靴を選びたくなりますよね。

けれどわたしは、靴ひもを丁寧に締めることは、毎日のお肌のお手入れとよく似ていると感じています。

丁寧に洗顔し、化粧水や乳液をなじませる。その日一日だけでは変化がわからなくても、小さな積み重ねが数年後の肌をつくっていく。

足も、それと同じだとわたしは考えています。

毎日、足を靴の中にきちんと収め、ひもを締めて歩く。そのわずかな手間の積み重ねが、足の使われ方や安定感につながっていくのではないか——これは、わたしが長年、靴と足を見てきた中で感じていることです。


50代・60代は、これから「自分の時間」を楽しむ年代

子育てや親の介護がひと区切りし、少しずつ自分の時間を取り戻していく50代・60代。

  • 旅行に出かけたい
  • 自然の中を歩きたい
  • お孫さんと出かけたい
  • 行ったことのない場所を訪ねてみたい

これから楽しみたいことは、きっとたくさんあるはずです。その楽しみを、足や膝への不安であきらめてほしくない——わたしは心からそう思っています。


「もう一度、歩き方から整えたい」というお客様の決意

今回、お客様は

「もう一度、歩き方から整えたいです」

とおっしゃり、再び継続コースを受けてくださることになりました。

足元は、一度整えたらずっと同じ状態が続くわけではありません。ケガをしたり、生活環境が変わったり、歩く量が変化したりすれば、体の使い方も少しずつ変わっていきます。

だからこそ、その時々のご自身に合わせて、靴の履き方や歩き方を見直していただくことを、わたしはおすすめしています。

今日のほんの少しの手間が、5年後、10年後も自分の足で歩き続けることにつながっていく——日々の小さな習慣が、これからの生活を豊かにしていくと、わたしは信じています。


こんな方に読んでいただきたい記事です

  • 以前より歩く量が減り、膝や足に不安を感じている
  • トレッキングや旅行で急に膝が痛くなった経験がある
  • 靴ひもを締めずに楽な靴ばかり選んでいる
  • これからも自分の足で、好きな場所を歩き続けたい

ひとつでも当てはまる方は、ぜひ一度、靴の選び方や歩き方を見直すきっかけにしてみてください。

なお、膝の痛みが続いている方、強い痛みがある方は、まず医療機関にご相談いただくことをおすすめします。


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ご自身の足に合った靴選びについて、ぜひ一度ご相談ください。

靴と足の専門家 豊後 由美

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